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購入タイミング |
2024年8月も高温が続き、連日30℃を超える日が続いています。暑さの影響で判断が鈍りがちですが、だからこそ冷静な投資判断が重要です。7月31日の日銀による予想外の利上げには驚かされましたが、株価の暴落は一時的で、多くの銘柄はすぐに暴落前の水準まで回復しました。
暴落時、私は絶好の買い時だと考え、半ばパニック状態で深く考えずに、10銘柄ほどを手当たり次第に購入してしまいました。今振り返れば、じっくり考えて銘柄を選ぶという私の信念に反する行動だったと反省しています。しかし、結果的にかなりの含み益が出たので、良かったとも思っています。皆さんはいかがでしたでしょうか?
さて、2024年9月の一押し銘柄はクミアイ化学工業(株)(4996)です。現在(2024年8月29日)の株価は779円で、配当や投資指標から、今が絶好の買いタイミングと考えています。割安株としても、おすすめですが、クミアイ化学工業はディフェンシブ銘柄でもあり、景気不安が懸念される状況でも中長期的に安定した業績が期待できる企業です。
では、クミアイ化学工業の投資魅力と市場での位置付けについて、さらに詳しく見ていきましょう。
クミアイ化学工業(株)がお勧めの理由
このブログは2024年8月29日時点の情報をもとに作成しています。
株価:779円
銘柄名:クミアイ化学工業(株)(化学)
銘柄コード:4996
クミアイ化学工業は、1949年の設立以来、農薬事業を中心に成長を遂げてきた企業です。現在では、農薬をはじめとする化成品やその他の多くの製品を提供し、世界の食料問題解決や豊かな生活の支援に貢献しています。2017年からは農薬事業に加え、化成品事業を第二の柱として位置づけ、さらなる成長を目指しています。
売上は2010年度の383億円から連続して増加しており、2023年の売上は1,610億円、2026年の売上目標は1,850億円と高い向上心を掲げています。また、研究開発に力を入れており、220億円を投資しているため、自社開発の原体として除草剤10種、植物成長調整剤1種、殺菌剤8種、殺虫剤1種を持ち、技術力を高めています。新農薬1剤を開発できる確率は一般的に「16万分の1」とされる中、同社では「7,500分の1」という極めて高い確率を実現しています。
さらに、クミアイ化学工業は積極的な海外展開にも取り組んでおり、50以上の国々に製品を販売しています。国際市場においても確固たる地位を築き、グローバルマーケットを見据えた研究開発、製造、販売ネットワークを構築しています。
クミアイ化学工業についての概要を理解したところで、本題に入ります。クミアイ化学工業の株が今、買い時である理由を説明します。
まずは配当についてです。2024年10月末の権利確定で支払われる予定の配当利回りは約3.88%(1株あたり30円)です。昨年、2023年の配当性向は30.0%でした。配当利回り(予定)も配当性向(実績)も業界内の主要企業と同程度、または若干高めです。
次に投資指標です。PERは7.77、PBRは0.65と、いずれも良好な数値です。割安株と判断していいでしょう。
原油価格やナフサ価格の高騰により、化学業界全体が落ち込んでいるため、業界全体でPERやPBRが低く、ほとんどの企業が割安な状態にあります。市場は慎重な姿勢を見せていますが、クミアイ化学工業は農薬に特化した企業であり、石油化学業界全体と比べて比較的原油価格やナフサ価格の影響を受けにくいという特徴があります。そのため、現在の市場価格に対して割安と考えられますので、今が買いのタイミングとなります。
※配当やPER、PBRなどの数値指標の見方については、こちらをご覧ください。
総合評価
化学業界において懸念されるのは、原油価格やナフサ価格の今後の見通しが不透明である点です。そのため、これらの影響を受けにくい企業を選ぶ必要があります。クミアイ化学工業は、農薬の主な原料である原体を自社で保有しているため、他の化学企業に比べて原油価格やナフサ価格の変動を受けにくいと考えられます。
しかし、この銘柄を推奨する最大の理由は、景気の変動に強いディフェンシブ銘柄であるという点です。景気が悪化しても農薬の需要は安定しているため、安定した業績が見込まれます。
2024年7月31日の予想外の利上げで株価が一時的に暴落しましたが、約2週間で元の水準に回復しました。この動きは、市場が先行き不透明であることを示していますが、ディフェンシブ銘柄はこうした状況に強いのが特徴です。
多くの優良ディフェンシブ銘柄はすでに割高になっている中、クミアイ化学工業はまだ割安です。今のうちに購入を検討する価値があると考えています。
安定性
【企業規模】
- 売上高: 2023年10月決算の売上高は161,002百万円です。2010年の383百万円から毎年増加しており、安定した成長を示しています。安定していると判断できます。
- 従業員数: グループ全体の従業員数は2,124人です。大企業としては中程度の規模ですが、農薬に特化した企業とすれば、安定していると考えられます。
- 取引高: 2024年8月27日の取引高は241,700株でした。高い取引高は株の流動性が良好であり、価格の安定性が期待できることを示します。株価は信頼できる値と考えられます。
取引高が24万株とやや少なめです。人気の無さが取引高にも反映されているようです。とはいえ、1万株以上が取引されているため、流動性としては高い方ですので、株価の操作が難しく、安定性も高いと考えられます。
【負債・自己資本】
- 負債総資産比率:44.9%。計算式は『(負債合計※:122,940 ÷ 資産合計※:273,588)×100』業界平均の50%〜60%を下回っています。これは、同業他社に比べて負債依存度が低く、より健全な資本構成を保っていることを示しています。負債の割合が少ないことで、外部の資金調達に依存せず、自社の資本で安定した運営が可能です。
- 自己資本比率:55.1%。計算式は『(資本合計※:150,648 ÷ 資産合計※:273,588)×100』業界平均の40%〜50%を大きく上回っています。自己資本比率が高いことは、安定した資本基盤を持ち、経済の変動や外部ショックに対する耐性が強いことを意味します。高い自己資本比率は、企業が外部からの資金調達に依存せず、内部資源で安定した成長を図っている証拠です。
※決算数値は企業のホームページのIR情報を参照しました。
負債総資産比率は低く、自己資本比率はとても高い値です。財務の健全性としては良好です。特に、自己資本比率が高いことは、企業が安定した財務基盤を持っていることを示しており、財務的なリスクが比較的低いと評価できます。
成長性
【売上高成長率】
会社予想では約-3.7%の減少、コンセンサス予想では約0.2%の増加にとどまっています。これは、農薬の世界的な在庫圧縮基調による出荷減が影響しているとのことです。(※IR情報より)一方で、一部のアナリストは農薬の需要が予想以上に回復し、安定した売上高が期待できると見ており、この点がコンセンサス予想に反映されていると考えられます。つまり、農薬の市場環境が改善し、売上高が増加を見せる可能性もあるということですよ。
【財務諸表】
2022年 | 2023年 | 2024年10月 (会社予想) | 2024年10月 (コンセンサス予想) | |
---|---|---|---|---|
売上高 | 145,302 | 161,002 (+10.8%) | 155,000 (-3.7%) | 161,367 (+0.2%) |
営業利益 | 12,673 | 14,089 (+11.2%) | 10,000 (-29.0%) | 11,177 (-20.7%) |
経常利益 | 23,570 | 24,115 (+2.3%) | 15,500 (-35.7%) | 16,180 (-32.9%) |
当期利益 | 16,329 | 18,024 (+10.4%) | 12,000 (-33.4%) | 11,973 (-33.6%) |
売上高について
クミアイ化学工業の売上高は、農薬の世界的な在庫圧縮基調による出荷減が影響し、会社予想では前年よりも-3.7%減少する見込みです。しかし、コンセンサス予想では前年とほぼ同じ水準が維持されるとされています。実際の業績がどうなるか注目されますが、過去のデータを踏まえると企業予測の精度は高いと考えられます。
営業利益について
営業利益や経常利益の減少は、農薬事業の減収の他に、原燃料費、物流コストの増加、販売費や一般管理費の増加によるものもあります。
当期利益・経常利益について
当期利益や経常利益の予想に関しても、会社の予想は控えめです。2024年度には、研究開発費として72億円(前年実績62億円)、設備投資として102億円(前年実績87億円)、減価償却費として51億円(前年実績44億円)が見込まれています。いずれも前年を上回る投資です。これらの投資は、新技術の開発や老朽化した生産設備の更新に充てられ、企業の長期的な成長を支えるためのものです。これにより当期利益や経常利益が一時的に減少する可能性がありますが、将来的な成長のための重要な投資です。
また、クミアイ化学工業は配当性向30%以上を目標としており、2024年度の配当予想は年間30円(中間配当10円+期末配当20円、配当性向30.1%)です。前回予想の18円よりも2円増配されたことから、利益が配当に回されるため当期利益や経常利益が減少していることが分かります。この配当の増加も当期利益・経常利益が減少する理由の一つと考えられます。
全体の見通し
クミアイ化学工業は、安定した業績を持ち、景気の変動に強いディフェンシブ銘柄です。今年度の会社予想では、世界的な在庫圧縮に伴う出荷減少の影響で売上が減少する見込みがあるものの、将来を見据えた内部投資を積極的に行っているため、長期的な成長が期待できます。将来、大きなリターンが見込まれる銘柄として、今のうちに購入を検討する価値が十分にあるでしょう。
配当
クミアイ化学工業は、2023年10月度の通期報告書で、配当性向を引き上げて株主への利益還元を強化することを発表しました。配当性向30%以上を目標にすることで、株主への還元率を明確にし、信頼を得る経営を進めています。今後も高配当が期待できるでしょう。
【配当利回り】
2024年度は1株当たり30円と発表しています。配当利回りは3.85%です。今期は売り上げが落ちてこの配当ですので、今後利益が上がればさらに期待できます。仮に、もしこの配当額が26年間続いたとすれば78,000円。配当だけでの元本を超える利益を得られます。
上記は、損失回避株価のグラフです。損失回避株価とは、株を購入した価格から、毎年、配当分を引いた金額です。つまり、株価が下がったときに損失しないギリギリの株価の値です。この株価は、配当収入が継続することを前提にしています。
損失回避株価は私が作り出した造語です。「もし株価が下がったとき、損をしない株価」です。例えば、6年間保有していれば株価が599円まで下がっても、下落分の配当を受け取っているため損をしていません。また、26年間保有し続け、たとえ株価が0円になってもその分配当をもらっているため損はしていません。上記はそれをグラフ化したものです。ただし、毎年30円の配当が支払われることが前提です。株を購入する際には、企業の業績が悪化して配当が減少する可能性も考慮に入れ、損切できるか等を検討してから購入することをお勧めします。
【配当の推移】
配当金額は年々増加しています。特に2022年から2023年にかけての増加幅が顕著です。この増加は、企業の利益が増加したことと、会社の経営方針として株主還元を強化したことが反映されています。
【配当性向】
1株配当金額 | 1株当たり当期利益 | 配当性向 | |
---|---|---|---|
2022年 | 22 円 | 135.45 円 | 16 % |
2023年 | 45 円 | 149.88 円 | 30 % |
2024年(見込) | 30 円 | 99.69 円 | 30 % |
2024年の配当は下がっていますが、配当性向は引き続き30%を維持する見込みです。株主に対する還元意識は継続されていることが分かります。
【業界比較】
他の農薬業界の主要企業の配当。(調査日2024年7月30日)
配当予想 | 配当利回り | 2024年の配当性向(予測) | |
---|---|---|---|
住友化学 | 120円 | 2.17 % | - |
日本農薬 | 54円 | 3.15 % | 29.6 % |
日産化学 | 164円 | 3.28 % | 60.1 % |
石原産業 | 70円 | 4.59 % | 33.4 % |
クミアイ化学工業 | 30円 | 3.85 % | 30.0 % |
クミアイ化学工業の配当利回り3.85%は、同業他社と比較して割安感があります。たとえば、業界最大手の住友化学の利回り2.17%よりも高い水準にあります。また、配当性向は30%と業界内では若干低めですが、高すぎる配当性向は業績悪化のリスクがあるため、30%くらいが丁度良く、健全な水準といえます。
企業は上場と同時に株を発行し、資金を調達します。その後、株価が上がっても下がっても、最初に発行して調達した資金に影響はありません。つまり、たとえ株価が上昇しても、企業の資金が増えるわけではありません(融資枠が増える可能性はあります)。企業は株価や配当利回りに直接的な責任はありませんが、配当金額については企業の責任です。配当性向は、利益からどれだけを配当に回すかを示すもので、この数字によって株主に対する企業の姿勢が見えてきます。クミアイ化学工業の配当性向は30%で、これは業界内の主要企業の中で平均的な水準です。
一方、日産化学の配当性向が60.1%です。配当性向が高いということは、企業が得た利益の大部分を株主への配当に回していることを示しています。日産化学は、農業化学品だけでなく、機能性材料や医薬品等も手掛けており、高収益の裏付けもある企業です。しかし、配当利回りが3.28%やPBRが3.08等、割高指標が出ています。優良企業であることは間違い無いので、割安になるタイミングを待ちたいですが、同時に、高すぎる配当性向の理由も調べておきたいです。
購入タイミング
【PER(株価収益率)】
ブログ作成時のPERは7.82です。PER(株価収益率)は、1株当たりの利益の何倍で株価が取引されているかを示す指標です。数式は『株価 ÷ 1株当たりの利益』です。私はこの指標を『どれだけ少ない年数で株価と同額の利益を得られるかの割合』という見方をしています。PERが7.82であるため、わずか8年間の利益で株価分に相当するくらい、株価が利益に対して低く設定されていることを意味します。言い換えると、割安であるということです。
【PBR(純資産倍率)】
ブログ作成時のPERは0.65です。PBR(株価純資産倍率)は、1株当たりの純資産の何倍で株価が取引されているかを示す指標です。数式は『株価 ÷ 1株当たりの純資産』です。私はこの指標を『どれだけ少ない資金で純資産を所有しているかの割合』という見方で捉えています。PBRが0.65であるため、もし、クミアイ化学工業が倒産した場合に、純資産から受け取れる権利は、780円で購入した金額より多い1200円分ということになります。こちらも割安であるといえます。
【業界比較】
他の農薬業界の主要企業のPER,PBR。(調査日2024年7月31日)
PER(株価収益率) | PBR(純資産倍率) | |
---|---|---|
住友化学 | 33.87 | 0.66 |
日本農薬 | 10.38 | 0.63 |
日産化学 | 18.01 | 3.08 |
石原産業 | 9.71 | 0.54 |
クミアイ化学工業 | 7.82 | 0.65 |
クミアイ化学工業のPERは7.82と低く良い水準です。また、PBRに関しても0.65と低くこちらもとても良い水準です。ただ、他の競合企業も同程度の水準ですので、業界全体が割安になっています。
まとめ
クミアイ化学工業の投資指標は、農薬業界の主要企業と同程度の水準にあります。現在の化学業界全体が割安と見なされている中で、クミアイ化学工業のPERは7.82、PBRは0.65と低く、収益力や純資産に対して割安と言えるでしょう。
割安の要因には、化学業界における原油価格やナフサ価格の高騰による業績悪化懸念が挙げられます。しかし、クミアイ化学工業は農薬の原体を主な原料とするため、これらの価格変動の影響を比較的受けにくいです。また、農薬は景気の影響を受けにくいディフェンシブな商品のため、景気悪化時でもクミアイ化学工業は安定的な需要が見込まれる企業と言えます。最近の株式市場における不確実性(もしトラ懸念やインフレ、国際情勢の変動など)から、こうしたディフェンシブ銘柄が注目されています。
また、市場では新NISAの導入に伴い、優待や配当を重視する投資家の間で配当銘柄の人気が高まっています。クミアイ化学工業は配当利回り3.85%、配当性向30%で、業績の減少が見込まれる中でも安定した配当を維持しており、株主重視の姿勢が伺えます。昨年の配当実績から、業績が上がると配当が増加の期待がもてるため、今後、投資家にとって魅力的な配当銘柄となる潜在力があります。
以上の理由から、クミアイ化学工業の株式は現在の割安感を生かして投資を検討する価値があると考えられます。株価が上昇し、割安感が薄れる前に購入を検討するのが良いでしょう。
クミアイ化学工業の株式は、現在の割安感を活かして投資する価値があります。割安感が薄れる前に購入を検討することをお勧めします。
引用
IR情報は、クミアイ化学工業(株)の決算短信・説明会資料から引用しています。詳細は企業の公式ウェブサイトのIR資料室をご覧ください。
また、上記の報告書から取得できなかったIR情報については、Yahoo!ファイナンスから取得しています。詳細はそちらをご覧ください。
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