サラリーマンだった頃、週末にサーフィンを楽しむために頻繁に車中泊をしていました。当時、車中泊はただ眠るための手段でしたが、あれから30年以上が経ち、今ではさまざまな家電を使って車中泊を快適に過ごすのが当たり前の時代になりました。
車中泊をより快適に楽しむためには、持参する家電製品とそれに必要な電力計画を立てることが非常に重要です。
短期間の車中泊なら、自宅で充電した電力を使い切っても問題ありませんが、長期の車中泊では、家電を使い続けるために、ポータブル電源の電力を常に蓄えておく必要があります。そのためには、ソーラーパネルからの充電がおすすめですが、ポータブル電源とソーラーパネルには相性があり、接続端子や仕様が合わないと充電できません。
今回のシリーズでは、長期車中泊に必要なポータブル電源とソーラーパネルの選び方について詳しく解説していきます。
第1回目の今回は、まず持参する家電製品とその消費電力を確認し、それに基づいた電力計画を立てる方法についてお話しします。家電製品の選定や電力消費の見積もりは、快適な車中泊を実現するための第一歩です。これをしっかりと行うことで、必要なポータブル電源の容量や適切なソーラーパネルの選定に繋がります。
これら4回のシリーズを通じて、実際に使用する家電製品の選び方から、ポータブル電源とソーラーパネルの具体的な選定基準まで、詳しくご紹介していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
ポータブル電源選びのポイント
狭い車内で車中泊をする場合、ポータブル電源は小型で軽量なものが望ましいです。しかし、小型で軽量なものは容量が少なく、使用できる家電が限られてしまいます。逆に、容量が大きなものは重量やサイズが増し、価格も高くなります。
したがって、長期車中泊のポータブル電源選びでは、大きすぎず小さすぎず、持っていく家電の電力量に合った適切なサイズを選ぶことが重要です。そのため、サイズを小さくするために消費電力を抑えた家電を選ぶことがポイントになります。
ものが多いとじゃまなんだにゃ~
そのためには、ポータブル電源の容量と各家電の消費電力を比較する必要があります。その前に、基本となる家電とポータブル電源の容量の単位を整理しておきましょう。
電力単位の違い(Wh:ワットアワー と mAh:ミリアンペアアワー)
一般的な家電製品の仕様欄に記載される単位はWh(ワットアワー)です。一方、ポータブル電源の仕様欄に記載されている単位は主にmAh(ミリアンペアアワー)です。目的のポータブル電源が1日に必要な消費電力をまかなえるかどうかを検討するためには、この2種類の単位を比較する必要があります。
mAhってモバイルバッテリーの容量の単位だよね?
1000で割ればWhになるんじゃないの??
mAを1000で割るとAになるけど、電力量にするにはもうひと手間必要です
Wh:ワットアワー(家電製品の消費電力量)
Wh(ワットアワー)は、家電製品の電力消費量を表す単位で、1時間あたりの電力消費量を示します。以下の公式で求めることができます。
消費電力量(Wh)=電流量(A)×電圧(100V)
1時間で使用する電流量(A)と電圧(100V)をかけて求めます。日本の場合、ほとんどの家電製品は100Vの電圧を使用しているため電圧は固定できます。家電同士であれば、電流量の比較で消費電力の比較ができます。
mAh:ミリアンペアアワー(ポータブル電源の消費電力量)
mAh(ミリアンペアアワー)は、モバイルバッテリーやスマートフォンなどに使用される単位で、『1時間で消費される電流量(mA)』を表します。ほとんどのバッテリーが3.7ボルトのリチウムイオンを使用しているため、モバイルバッテリー同士を比較しやすくするために、あえて『全ての容量を1時間で消費した場合(※)』としています。JIS規格で以下の公式で表されます。(※家電と違い1時間で必ず消費するという意味でないことに注意が必要です)
消費電力量(mAh)= バッテリーの容量(電流量(mA))× 電圧(3.7V)
mAhは、同じモバイルバッテリー同士を比較するときに便利ですが、一般家電製品と比較するためには、電圧が異なる(モバイルバッテリー:3.7V/家電:100V)ため、そのまま比較することはできません。以下の計算をして家電と単位を合わせます。
消費電力量(Wh)=(消費電力量(mAh)÷ 1000) × 3.7ボルト(V)
A(アンペア)にするために1000で割った後、電圧(3.7V)を掛ければ消費電力量(Wh)です。
この公式を単純にすると、
消費電力量(Wh)=消費電力量(mAh)×0.0037ボルト(V))
となります。
まとめ
一般的な家電製品とポータブル電源の容量を比較する場合、ポータブル電源の仕様欄に記載されたmAhに0.0037を掛けて家電の消費電力量(Wh)と比較する。
へーそんなんだ~。
ややこしいことはよくわからないけど、
ポータブル電源のmAhの値に0.0037をかければ
家電製品と比較できるってことね?
そう、その通り!それだけ覚えてくれれば十分です。
ねむくなったんだにゃ~
電力計画:主要家電が1日に必要な電力量の計算
次に、車中泊で使用される代表的な家電製品の電力消費量(W)を求めていきます。本来、Whは1時間で使用する電力量を表す単位ですが、複数時間の場合も同様に(Wh)で表すことがあります。しかし、わかりにくくなりますので、このブログ内では、両者を区別するために、複数時間の場合は(W)で表すことにします。
スマートフォン:14.8W/日
スマートフォンは、一般的に3000m~5000mAhの容量があります。ここでは、4000mAhで計算します。1日1回、0%から満タンにする場合、4000mAh × 0.0037V = 14.8W/日です。車中泊では、カーナビや情報検索、ゲームなどでスマートフォンを頻繁に使用するため、1日でバッテリーを使い切ってしまうことがよくあります。
電気ランタン:4.625W/日
ランタンで重要なのは明るさです。その明るさはルーメンという単位で表されます。昭和生まれの私もそうですが、一般的にはワット相当の方がわかりやすいと感じる人も多いでしょう。光源の明るさを示す一般的な目安として、20W相当は約170ルーメン、40W相当は約485ルーメン、60W相当は約810ルーメン、100W相当は約1520ルーメンと言われています。車中泊の狭いスペースでは、20W相当の明るさでも十分と感じるでしょう。
仮に200ルーメン(20W相当)程度の明るさを持つ電気ランタン約5000mAdで考えてみます。(実際にあるものです)0%から満タンにするには5000mA×0.0037V=18.5Wです。満タンで約12時間ですので、1日3時間だと4日使えます。すると1日当たりは、4.625W/日になります。
LED電球:13W/日
20W相当の電気ランタンの明るさが不十分な場合、クリップライトにLED電球を取り付ける方法もあります。結構明るいですが、意外と消費電力は少ないです。一般的なポータブル電源にはACコンセントが備わっているため、このような取り付けが可能です。
消費電力はわずか2.6Whですが、光度は350ルーメン(約30W相当)ありますので、一般的な電気ランタン(超高輝度でないもの)よりも明るく感じます。具体的には、日が暮れて車内で料理ができるくらいの明るさです。
例えば、18時から22時までの4時間使用しても、消費電力は1日あたり10.4Wしかありません。ただし、ACコンセントを使用する場合、ポータブル電源の直流を交流に変換し、さらに家電機器で再び直流に戻すため、変換ロス(80~90%程度)が生じます。このため、10.4W/日 ÷ 80% = 13W/日程度と考えます。
2.6Whの電球(350ルーメン)だけでは、暗いと感じるかもしれません。その場合、クリップライトを2灯式にして、2.6Whの電球と7.1Whの電球を設置するという方法があります。7.1Whの電球(60W相当、860ルーメン)は、車内ではとても明るく感じると思います。
私もこの方法を採用していますが、街灯などの明かりが少ない場所での車中泊では、7.1Wh(860ルーメン)は明るすぎて、なかなか使う機会がありません。しかし、夜中に探し物をする必要が出たときに役立つことがあります。2灯式なので、普段は2.6WhのLEDを使用し、必要に応じて7.1WhのLEDを併用して使っています。
パソコン:44W/日
最近では、スマートフォンでパソコンのようにいろいろなことができるため、必ずしもパソコンを持っていく必要はなくなりました。しかし、私は必ずパソコンを持っていきます。理由は、キーボードに慣れていることもありますが、google playストアにアップしているアプリにエラーが発生した場合、すぐに対処するためです。同じように、何らかの理由でパソコンを持参する方も多いと思いますが、パソコンは意外と電力を消費します。
一般的なノートパソコンの消費電力は、だいたい30Wh~60Whです。例えば、2024年5月現在の最新機種である『Let’s note SR3 CF-SR3GK6AS』の定格入力電力値は39W、最大消費電力は65Whです。仮に4時間使用した場合、定格156Wh(最大260Wh)の電力が必要です。この電力量は、一般的なポータブル電源(約300W)の半分以上をたった4時間で使ってしまいます。この数字を見てしまうと容量の大きなポータブル電源がほしくなりますが、大容量のポータブル電源が欲しくなるかもしれませんが、大容量のポータブル電源は大きくて重い上、ソーラーパネルでの充電に多くの時間がかかるため、長期間の車中泊にはあまりおすすめできません。やはり、消費電力が少ないパソコンを選んで電力量を抑えることをおすすめします。
たとえば、インバースネット株式会社(FRONTIER)から販売されている『FRT220Pパソコン(10.1型 2in1 タブレット 着脱式キーボード搭載)(2020年9月1日発売)』は、わずか最大11Whしか消費しません。
ここまで消費電力を抑えられているのは、6WhのCPU『Celeron N3350』を搭載したことが一番の要因です。4時間使用しても最大44W/日しか消費されません。この値は最大なので、例えば、ブログの更新や写真・動画の整理だけを行うなら、さらに低い消費電力です。
また、4GBのメモリが搭載されています(増設はできません)ので、インターネット閲覧やエクセル・ワードなどOfficeの使用も可能です。
ただし、YouTube等の動画編集アプリやAndroidアプリの開発など、メモリを多く必要とする作業には向いていません。(一般的なWeb開発ツールであるEclipseを使用する程度なら問題ありません。)また、メモリ使用効率の高いLinuxをインストールすることもできません。もし、メモリを多く必要とする作業を行いたい場合は、残念ながらポータブル電源を動力源にすることをあきらめて、スターバックスやマクドナルド、図書館などで利用することをおすすめします。
2023年11月時点で、この製品の新品は未発売です。購入の選択肢は中古品に限られます。高スペックが求められる今の時代、消費電力が極端に低いパソコンはあまりありませんが、使用方法によっては消費電力を抑えることも可能です。
パソコンの構成要素の中で最も電力を消費するのはCPUです。CPUが低消費であれば、全体的な消費電力も低くなります。『おすすめ主要CPUの性能比較・一覧表』などのページを参考にして、5Wh,6Wh等の低消費電力のCPUを搭載したパソコンを選ぶことも一つの方法です。
こちらの2024年モデルのノートパソコンは、Celeron N4500(6W)を搭載しています。Windows 11が搭載されており、8GBのメモリも付いているので、手頃な価格で満足度が高い製品です。
テレビ:60W/日
車にテレビが標準装備されているのが一般的です。持参するという発想は少ないかもしれませんが、エンジンをかけずに視聴したい場合や、自宅で録画した映画やバラエティ等を楽しみたい時など、テレビを持参する意味もあります。
そんなとき、おすすめの製品は(TH-TV16TW01 TOHOTAIYO)です。録画用のハードディスクは別途購入する必要がありますが、録画機能が備ってこの値段は驚きです。さらに、消費電力がわずか12Whというのが1番のおすすめ理由です。
デメリットは、視野角が狭いことです。コストと消費電力を抑えたエッジ型(液晶を周囲に配置する方式)の限界のようです。正面から見ると美しい映像が楽しめますが、少し左右や上下にずれると画面の端が暗くなり、映像がよく見えません。夫婦で鑑賞する場合は、お互いの位置から見えるようにテレビの角度を微調整して1~3メートル離れた位置から鑑賞すれば、問題なく楽しむことができます。
仮に1日に4時間視聴した場合、48W/日の電力が必要です。
へー?
結構きれいなのに消費電力量は少なんだね~?
一般的な16インチテレビの消費電力は50~60Whらしいよ。
12Whってすごく少ないのに、
それでいてあのきれいさはちょっと信じられないよね!?
2024年5月時点で、この商品の新品の発売はありません。
比較的消費電力を抑えたテレビは、日本の滋賀県にある(株)ASTON(2020年設立)という会社から、『ASTON CONEX 16インチ 液晶テレビ ハイビジョン HD 地上デジタル 壁掛け 外付けHDD 録画 HDMI端子 PC入力端子搭載』が販売されています。仕様上の消費電力は15Whです。仮に1日に4時間鑑賞した場合、60W/日の電力が必要になります。
(TH-TV16TW01 TOHOTAIYO)より若干消費電力は高いですが、それでもたったの15Whです。メーカー保証が1年あり、ハイビジョン録画が可能でこの価格(2024/5/2時点のamazonで\7800)は非常におすすめの製品です。視野角が狭い点に関しては、この製品も同じようです。
このページでは、車中泊で使用する家電がどれくらいの電力を必要とするかを考察しました。次回は、これらの家電が消費する電力を基に、実際にポータブル電源を選ぶ際のポイントをご紹介いたします。
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