快適な車中泊!アウトドア電源の充電対策:第3回 – ソーラーパネルで充電できないポータブル電源の原因
前回は、車中泊で使用する家電に適したポータブル電源の選び方についてご紹介しました。今回は、そのポータブル電源を効率よく充電するためのソーラーパネルの選び方を説明します。
ポータブル電源とソーラーパネルには相性があります。接続コネクタの形状が異なると接続できず、入出力の仕様が異なると充電されないことがあります。
今回は、ソーラーパネルとポータブル電源の相性について、どのような点に注意して選べば良いのか、長期車中泊で実際に使用したポータブル電源とソーラーパネルを例に、選び方のポイントをご紹介します。
ソーラーパネルの選び方
ポータブル電源は、AC充電、シガライター充電、ソーラーパネル充電など、さまざまな充電方法に対応しています。通常、『AC充電ケーブル』と『シガライター充電ケーブル』は製品に含まれているため、これらの充電方法で問題になることはありません。
ならシガライター充電でやればいいんじゃない?
もちろん、シガーライターを予備的に使うのは問題ありません。
しかし、エアコンやオーディオなどを使用しながら
シガーライターでポータブル電源を充電すると、
バッテリーの電圧が下がりやすくなります。
その結果、優先度の低いポータブル電源への電力供給が難しくなります。
いつだったか、結構な距離を走ったのに
あまり充電されていなかったのはそのためね?
そう!きっとあのときは、
車載バッテリーの電圧が低かったのだと思います。
シガーライターでの充電は移動中にしかできないことや、
万が一、山奥やへき地でバッテリーが上がってしまうことを考えると、
シガーライター充電をメインにするのはあまり推奨できません。
ポータブル電源にはソーラーパネルが同梱されていないため、別途購入して接続する必要があります。ソーラーパネルを選ぶ際には、まず接続コネクタ端子の形状を確認しましょう。接続コネクタ端子の形状はいくつかあるため、仕様を確認してから購入しないと接続できない可能性があります。ポータブル電源には、以下のような形状のコネクタが使用されています。
- MC4コネクタ: ソーラーパネルの出力端子として広く使われている接続形状です。
- DCプラグ: ACアダプターなどを使ってDC電源に接続するための形状です。小型のポータブル電源のソーラーパネルに採用されることがあります。一般的には、直径が5.5mmで、内側が2.1mmですが、他にも異なるサイズがあります。
- XT60コネクタ: 主にリチウム電池バッテリーとの接続に使われるコネクタで、特にEcoFlow(エコフロー)のソーラーパネル接続で見られます。
次に、ポータブル電源の入力仕様を確認しましょう。入出力端子の仕様が合わないと、保護機能が働いて充電が中断されることがあります。この保護機能は、ソーラーパネルからの電力の取り込みを一時的に中断し、ポータブル電源を保護するためのものです。通常、保護機能は電流と電圧の範囲で表現されます。
最後に、ソーラーパネルの出力仕様を確認し、ポータブル電源を充電できる適切な電力を出力するソーラーパネルを選びまます。
仕様に書かれているAC、DC、ACアダプターとは
ソーラーパネルとポータブル電源の仕様を理解する前に、仕様欄によく記載されているAC、DC、ACアダプターについて整理しておきます。
ACとはAlternating Current(交流電流)の略語であり、電気が往復するように流れるため、交流と呼ばれます。一般家庭のコンセントから供給される電流の仕様がACであると言えばわかりやすいでしょう。
一方、DCはDirect Current(直流電流)の略であり、電気が一方向にしか流れないため、直流と呼ばれます。ほとんどの家電製品は、電圧、電流、周波数が安定的に供給できるDCで動作するように設計されています。家電であるポータブル電源もこのDCで動作します。
DCで動作する家電製品は、同様されているACアダプターを使って家庭用コンセントから出力されるACをDCに変換して使用します。
家電製品がDCでしか動かないのなら、
なんではじめからDCで流さなないの?
電力会社が電力網(インフラ)を整備した当初、送電する際に
『電気ロスが生じる』『高電力から低電力へ下げるコストがかかる』
などの問題を解決できなかったため、
DCではなくACで送電したそうです。
しかし、現在の技術であればDCでも流せるという話もあるようですよ。
ACアダプター入力仕様がソーラーパネルの選定条件?
ACアダプターの入力仕様を理解する
ポータブル電源の入力仕様に合ったソーラーパネルを選びます。たとえば、TACKLIFE P16の場合、入力端子の仕様に『DC Input:15V/2A』と記載されています。
この記載は「このポータブル電源への入力は、直流定格電圧15V、直流定格電流2Aを流してください。」という意味です。『定格』という言葉は、本来『定められた能力』という意味です。
しかし、一般の家庭用コンセントであれば、常に15V、2Aの安定した電力を供給していますので、『最も効率の良い値』つまり『最大』と同じ意味になります。したがってこの記載は「最大15V、最大2Aで入力してください」と書かれていると考えるとわかりやすです。
ソーラーパネルからの入力仕様を理解する
最大ですので、その数値以下でも充電できますが、ソーラーパネルは天候や太陽光の角度によって生成する電力量が変わるため安定した電力を送電することができません。そのため、ソーラーパネルからの入力仕様には範囲が記載されているのです。
例えば、TACKLIFE P16のソーラーパネル入力仕様には「Charging 13-22V 30W Max」と記載されています。これは「このポータブル電源は、13V〜22Vの電圧で最大30Wの入力しかだめです」という意味です。
「?」と思いませんか?
ACアダプターの入力仕様には定格電圧が15V(最大15V)と記載されていました。それなのに、「22VまでOK!」と書かれているのです。仮に2Aの電流を流すと44Wの電圧が流れますので、最大30Wをはるかに超えてしまいます。
電圧、電流、電力の基本を理解する
ここに書かれていることを理解するためには、電圧、電流、電力の基本を理解する必要があります。
電圧、電流、電力の基本は、水車の仕組みにたとえると分かりやすいと言われています。水のちからが電圧が、水の量が電流、そして水車が回ることで得られる動力が電力にたとえます。
水圧が高ければ水車にかかる力が大きくなるように、電圧が高ければ電流が流れやすくなります。電流は導体を流れる電子の流れであり、電圧があるときにのみ流れます。水の流れが多ければ水車が回る力が強くなります。電力は電圧と電流の積で表され、両方が大きいほど大きな電力を得られます。
過電圧保護機能と過電流保護機能を理解する
しかし、水の流れが強すぎると、水車が壊れてしまうかもしれません。この状態を過電圧といいます。同様に、水の量が多すぎると、水車が壊れてしまうかもしれません。この状態は過電流といいます。
逆に、水の流れが弱すぎたり、水の量が少なすぎたりすると水車は回りません。この限界値が電圧・電流の下限値です。
つまり、電流や電圧が高すぎても低すぎても適切ではなく、適切なバランスの電力でないと電力を蓄え続けることができません。適切な電流量と電圧量を維持するための制御機能が、過電圧保護機能と過電流保護機能です。これらは13V~22V、最大30Wといった範囲で設定されています。
例えば、ソーラーパネルから作り出す電力が22Vを超えた場合、保護機能が働いて充電が中断されます。つまり、このポータブル電源には、23V以上の電圧を作り出す高出力のソーラーパネルでは保護機能が働くため、充電ができないと推測できます。
結論:ACアダプターの実測値が最適な入力仕様である
本来、ACアダプターからの入力仕様は15V 2Aで、最適な入力電力は30Whのはずですが、充電時間は8〜9時間と記載されています。ポータブル電源の容量は167Whなので、1時間あたりの発電量は約20Whです。つまり、ACアダプターからの充電でも、実際には平均して1時間に20Wh程度しか充電できていないと推測できます。
また、ソーラーパネルの入力仕様にも同様に最大30Wと記載されていますが、充電時間は8〜9時間とされています。そのため、やはり1時間に20Whしか充電できないと推測するのが妥当です。
つまり、ポータブル電源に合ったソーラーパネルは、ポータブル電源のACアダプターの実測値に近い電力を作り出すソーラーパネルが最適と考えた方が良さそうです。ただし、ソーラーパネルから出力される電力には、曇りの日では低く、晴れた日では高いという差があるため、ポータブル電源の入力仕様が想定する天候や充電する時間帯に合っているかも考慮しなければなりません。
60Wや100Wの高出力ソーラーパネルで充電すれば、より短時間で充電できると勘違いしがちですが、実際には20W(仕様上は30W)を超えると保護機能が働き、ほぼ充電されなくなる可能性があります。高出力のソーラーパネルは高価であり、効果的に充電されないと大きなストレスを感じるかもしれません。
実例で理解:ポータブル電源に合ったソーラーパネルの選定とそのポイント
それでは、私が実際に買ったポータブル電源(MIGHTY)を例にして、具体的にどういうソーラーパネルが最適かを考えてみることにします。
ACアダプターの入力仕様(実測値)を理解する
まず、AC電源の入力仕様に基づいた充電可能なソーラーパネルを考えます。このポータブル電源をAC電源で充電する時間は5~6時間です。1時間当たりの充電量は331Wh ÷ 5~6時間 = 66.2~55.1Whですので、出力が50~70Wh程度のソーラーパネルが最適ということになります。
ソーラーパネルからの入力仕様を理解する
一方、ソーラパネルの入力仕様欄には『DC 5-20V-5A 20-25V-1A 100W(MAX)』と書かれています。仕様を要約すると、以下のような範囲になります。
- 1Aの場合⇒20~25V
- 5Aの場合⇒5~20V
グラフでは以下のように表されます。
このグラフの範囲の出力を持つソーラーパネルであれば、保護機能は働きません。右側に行くほど多くの電力を供給できますが、最も効率的な位置は赤丸で示された位置(5A、20V=100Wh)です。
SYRIDE MIGHTYに最適なソーラーパネル
ACアダプターの実測値からは50~70Whが最適な範囲でした。一方、ソーラーパネルの入力仕様では20~100Whが充電可能な範囲ですので、20Whの出力を持つソーラーパネルでも充電可能です。ただし、より大きな電流の方が多くの電力を貯めることができますが、電力の供給が限界に近づくと電流または電圧の保護機能が作動するリスクがあります。そのため、80Wh程度が最適と考えられます。つまり、SYRIDE MIGHTYに最適なソーラーパネルの出力は約80Whと推測できます。
このページでは、ポータブル電源の入力仕様に基づいて、実際にポータブル電源に適したソーラーパネルの出力仕様について考察しました。次回は、私が実際に選んだソーラーパネルをご紹介させていただきます。
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